安い牛肉を美味しくするには「まいたけ」が最強!?
- views | 2016.09.24
「いかにして安い牛肉をおいしくするか」これは牛肉を消費する人の永遠のテーマですよね。そこで味博士の研究所でも、まいたけ・マンゴー・白ワインを使用し、どれが一番安い牛肉を美味しくしてくれるのか、味覚センサーで検証しました。
4種の牛肉を漬け込んでみる
今回はアメリカ産肩ロース(約250円/100g)を使用。まずは塩胡椒をしてよく揉み込み、包丁で筋を切断します。
それを4等分し以下のとおりに分けました。
・スタンダード(そのまま)
・マンゴーで一晩漬け込み
・まいたけで一晩漬け込み
・白ワインで一晩漬け込み
漬け込み前はこのような感じです。
4種の牛肉を焼いてみる
条件を合わせるため同じフライパンにオリーブオイルを同量入れ、中火で両面各2分半づつ焼きました。
まずはそのままの肉と白ワインです。
左:スタンダード 右:白ワイン 塩胡椒で味つけています。
肉の色もサイズも全く違う!?しかも白ワインの方はアクのようなお汁が出てきました。
これは白ワインで漬けたことにより、肉の組織全体が酸性に傾き保水性が上昇。焼いた際に脱水していると考えられます。
お次はまいたけとマンゴー。
上:まいたけ 下:マンゴー
まいたけとマンゴーは肉の大きさは変化がないものの、まいたけの方が赤身の色が鮮やかでした。
焼き上がりがこちら!
左から塩胡椒のみ、白ワイン、マンゴー、まいたけ
さてと、役者が揃ったので…
味覚センサーレオで検証してみました
結果はこちらです。
白ワインは酸味と苦味が上がり、バランスが取れたように見えますが、少し旨味が減りました。これは焼きの工程時流れ出た水分とともに旨味も溶出してしまったためと考えられます。
マンゴーは甘味と酸味が上がりました。しかしフルーティーなステーキになってしまったため、日本人の味覚にはあまり馴染みがない可能性が…。
対して、まいたけは今回の検体の中で最も旨味が高い数値に(下図参照)。また、甘味、酸味、苦味も上がっており、全体的にバランスの取れたまとまった味となりました。
食感は白ワイン>まいたけ≒マンゴー>スタンダード。
白ワインが一番柔らかかったものの、柔らかすぎてほぼお肉の食感なしになってしまったのが残念なところ。逆に、まいたけとマンゴーはスタンダードよりも若干柔らかく感じ、程よい硬さでした。
以上の結果から、勝者はまいたけ!!旨味の上昇・味のバランス・食感的に一番牛肉をおいしくしたといえるでしょう。
どうしてまいたけで牛肉がおいしくなるの?
なぜまいたけで旨味が上がったり柔らかくなったのかというと、まいたけに多く含まれる旨味成分「グアニル酸」とたんぱく質分解酵素「マイタケプロテアーゼ」の働きによるもの。マイタケプロテアーゼの働きによって肉組織のたんぱく質を分解して柔らかくし、同時にグアニル酸が組織の中に浸透することで旨味が上がったのです。
また、マイタケプロアテーゼの働きは加熱によって失われます。例えば、「加熱したまいたけ」と「生のまいたけ」を茶碗蒸しに入れて蒸すと、加熱したマイタケの方は固まりますが生の方はドロドロのまま。
加熱したまいたけは「マイタケプロテアーゼ」の働きが失活しているためきちんと固まるのですが、生のまいたけの方は「マイタケプロテアーゼ」が卵のタンパク質が固まるのを防いでしまうために起こる現象です。
ということで、今後はまいたけを使った牛肉レシピの開発と、究極に美味しい牛肉についての調査にチャレンジしていきたいと思います!
「味博士の研究所」の牛肉への探究はまだまだつづく…
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味博士:味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。
ブログ『味博士の研究所』:http://aissy.co.jp/ajihakase/blog/